『ここにいる』

お盆の法要を終え、真っ青な空を見上げる。
子ども達と海へ行く道すがら、思い出すのは父に連れて行ってもらった夏の海。
若かった父が笑ってる。
楽しかった夏の思い出。
今、こうして子ども達と楽しむ時間も、いつか子ども達のよき思い出となるだろうか。

『ここにいる』
あおき ひろえ/廣済堂あかつき

わたしの成長を愛おしくみつめるおとうさん。
結婚をそっと後押ししてくれたおとうさん。
孫たちに囲まれ幸せそうに笑うおとうさん。

ページをめくると長女が「ぷっ」と吹き出す。
「なんで笑ったの?」と聞くと、絵本の中のおとうさんを指して 「だって、じいじにそっくり」 確かに父と似ている。
読みながら、父との思い出があふれ出す。

おとうさんとわたしの大切な日々は、そのまま自分と父との大切な日々と重なった。
絵本の中で、おとうさんとの別れがせまる。
“この世から いなくなる 3日前のことでした。”
この言葉を聞いて、兄さんが
「おれも、3日前くらいだった。じいじにさいごに会ったの。男同士の話をしたんだ」とぽつりと言った。
兄さんもじいじを思い浮かべて聞いていたのね。
私はといえば、兄さんのその言葉で、次のページからは、涙をこらえて読むのがやっと・・・。
父との別れを思い出し、胸がキュッとなる。
「じいじ、笑っているかな?」と問うと、「笑っていると思うよ。でも、おれたちが悪い事したら、怒るね、きっと。」と兄さん。
笑っている顔も、怒っている顔も鮮明に浮かんでくる。
あー、そうか。
父はいつも私たちのそばにいる。
悲しみに包まれる別れのページも、たくさんの花とあたたかな色使いで、穏やかで幸せな気持ちになる。
子ども達と一緒に、大好きだったじいじを感じながら読むことができてよかった。
母はまだ“この人生を まっとうした おとうさん おめでとう”とはいえないといっていますが、いつかきっと・・・
母と苦楽を共にした父は何よりも母の幸せを願っているのだから、父は”もういいんだよ”といってくれているような気がするのです。

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絵本専門店グリム
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ロングセラーの絵本、昔話絵本、赤ちゃん絵本などを取り揃えています。蔵書数はおよそ3500冊。長年、絵本専門店を営んできた店主が思い入れのある本をセレクトしています。

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