☆《生誕110年記念》☆

やっと読了しました。
満たされています。
☆《生誕110年記念》☆
表紙、装丁など本が美しくページを開きたくなる!
600頁の大作にもかかわらず大河ドラマのごとくぐいぐい 引き込まれる!
『絵本画家 赤羽末吉 スーホの草原にかける虹』(赤羽茂乃著/福音館書店)
~ひとりの絵本画家、そして時代を生き抜いてきた家族のものがたり~

『スーホの白い馬』『かさじぞう』など数々の絵本で知られる日本初の 国際アンデルセン賞に輝く赤羽末吉の波瀾万丈の生涯を描く。
赤羽末吉の三男のお嫁さんとして身近にいた茂乃さんがエピソードを 交えながらあたたかく誠実に語る。
茂乃さんは赤羽末吉さんから “おしげさん”と呼ばれ、頼りにされていた。
丹念に書き込んだメモ、 スケッチブック、資料、時に赤羽末吉の軌跡を訪ねてのフィルドワーク から紡いでいく。
東京は下町で育った子ども時代から青年期に渡った旧満州での生活、引き揚げによる様々な苦難、子どもを次々と失う。
アメリカ大使館で 働きながらの二束のわらじ、画家として途轍もない赤羽末吉がやがて 誕生する。
この間八島太郎始め絵描きとしての糧になる人たちと出会う。

デビュー作『かさじぞう』は、ずいぶん前の勉強会で日本の雪の繊細さ、湿り気を含んだことが話題になり「かみちょうから しもちょうへ しもちょうから かみちょうへ」を読んだり語ったりするのに、 そのことを念頭にしなければねと話し合ったことがある。
『かさじぞう』が生まれるまでの途方もない時間、雪国に通い風土や 人々の暮らしを肌で感じ、生み出されていった絵、何とすごいことか。
激動の時代を真摯に生きて来られたその思いが絵本の中に息づいている。
それなりに読んでいたつもりだが、あの絵本もこの絵本もいっぱい 気づかせてくれる。
『おへそがえる・ごん』は絵巻物のような面白さ、テンポのいいセリフと好きなのだけれど“花”のことは全くすっとばして いた。
ほかの作品にも要所に花が描かれている。
「子どもは花を意識せず、賞でもしない。しかし、美しい花々は必ず子どもの心に作用している」 「一冊のよき絵本は伝統につながる」と。
このことに象徴されているように子どもへのまなざしの深さ、やさしさ、未来を見据えている巨匠の確かな眼を改めて感じた。
茂乃さんのお人柄でしょうか。
義母さんとも真正面から向き合い、時にはおかしみがあり、その人情味が絵本画家 赤羽末吉を身近に 感じさせてくれた。
エピローグは迂闊にも涙があふれてしまった。
すみません。長くなってしまいましたが、興味を持ってくださったら 嬉しいです。
参考文献リスト、年譜、写真、資料等が収録されている。

投稿者プロフィール

絵本専門店グリム
絵本専門店グリム
ロングセラーの絵本、昔話絵本、赤ちゃん絵本などを取り揃えています。蔵書数はおよそ3500冊。長年、絵本専門店を営んできた店主が思い入れのある本をセレクトしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です