『こんこんさまに さしあげそうろう』

4日は春分の日。
今日は冷たい雨がふっています。
こんな日は温かいふとんにくるまって子どもにそっと読んであげたくなります。

『こんこんさまに さしあげそうろう』
森はな・作梶山俊夫・絵PHP研究所 初版 1982年2月


何日も何日も雪が降り続いて、山も畑もまっ白。
キツネの巣穴では子ギツネが寒くってお腹を空かしています。
かあさんギツネは子ギツネが眠ったのを見届けて食べ物をさがしにいきます。
ねらったニワトリは犬に吠えられるし、川には氷がはっていて魚もとれません。
子ギツネはだんだんやせ細っていきます。
そんなある日、おいなりさまの森からかねとたいこの音が聞こえてきました。
「こんやは のせぎょうだったのか。ありがたいこと」とかあさんギツネ。
「こんこんさまに さしあげそうろう」と子どもたちの声が響いてきます。
かあさんギツネはごちそうを巣穴に運びました。
ごちそうを食べる子ギツネを見て涙がいっぱいになるのでした。
子を思う親心は動物も人間も同じですね。
切なくジーンと来ます。
梶山俊夫さんの深々とした雪景色のなかにも、キツネの親子がそっとくるまれるように描かれていて、心温かになります。
のせぎょう(野施行)とは、寒中にエサをさがすことのできない野の狐や狸などの鳥獣にエサを施すこと。

投稿者プロフィール

絵本専門店グリム
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