『きこえないこえ』 (作・内田麟太郎/絵・竹上妙/佼成出版社)

雪のような雲がぽっかりぽっかり浮いています。
雪の日、沼津は冷たい雨でした。
昨日は空一面薄雲におおわれていました。
”きこえないこえ”に呼ばれました。

『きこえないこえ』(作・内田麟太郎/絵・竹上妙/佼成出版社)

みさきに 老いたメスのゾウが立っていた。
最後のゾウだった。
はるかに遠い沖からきたともだち、クジラに静かに語りはじめた。
なぜ自分が最後のゾウになってしまったのか。
ゾウたちは豊かな森で安心して暮らしていたが、ある日人間たちが銃をもってあらわれた。
そして・・・
絵本を閉じると深いため息がでた。
「きこえないこえ」だけれど、心の奥に響いてきた。
ふと窓の外をみると夜のとばりが下りている。
空はあつい灰色雲におおわれ、その向こうは深い藍色で、まるで海のようだった。
ゾウの悲しい声がきこえるような気がした。
そして、くじらの悲しみと怒りの大きなため息で海が揺れている。
ゾウとクジラは、人には聞こえない超低周波を使って会話をすることができるといわれている。
インパクトのある絵からはそんな神秘的な声が迫ってきて、心が揺さぶられる。
裏表紙のゾウの背中が心なしか地球にも見える。
原画はすごい迫力があるにちがいない。

内田麟太郎さんの〈ひとこと〉
この絵本のお話しは『エレファントム 象はなぜ遠い記憶を語るのか』(ライアル・ワトソン ・著, 福岡伸一、高橋紀子・翻訳/木楽舎)を読み、深い感動を受けたわたしが、その感動を宝に書かせていただいたフィクションです。

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絵本専門店グリム
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