『森のなかの小さなおうち』
☆第28回いたばし国際絵本翻訳大賞(英語部門) 最優秀翻訳大賞受賞作☆
『森のなかの小さなおうち』(エリザ・ウィーラー作/ひらおようこ訳/工学図書)
時は世界恐慌、1930年代のアメリカ。
ある一家の実話にもとづく物語。
お父さんが亡くなり、家を手放さなくてはならなくなった9人家族が深い森の奥の小さな小屋で暮すようになりました。
冬は暗くて凍えるような寒さです。食料も乏しく兄さんたち2人は狩りにもいきます。
家の中ではパッチワークや本を読んだりしました。
けれども季節ごとに素晴らしい贈りものがありました。
きらきら光る雨、森には色んな木があり、草花が咲いていました。
ひみつの小道を辿っていくと、きいちごやブルーベリーがたわわになっているのでした。
森のなかにわらいごえがひびきわたりました・・・
文章は、自然に森の奥へ連れていってくれて読みやすい。
季節を追うごとにワクワクしてくる。
絵が時代を彷彿とさせていて、素晴らしい。
大自然の荘厳な美しさがまばゆいほどだ。
著者があとがきで書いています。
「大変な苦労があったのに、だれもが口をそろえて、そのころが一番楽しかったといいます。」
人が生きていくこと、豊かさとは改めて考えさせられました。
私自身、戦後のひもじい時代を体験しています。
子どもたちも働き手でした。
せりやノビル、ワラビ、ゼンマイを採り、川ではシジミ、ダボハゼやメソッコを釣ったりしました。
そのまま夕げのおかずになりました。
今でも思い出すと怖いのは、少し離れた小島に川をジャブジャブ渡っていって釣りをしたときのことです。
そこは岸から離れているので魚がいっぱい釣れたのです。
夢中になって釣っているうちに、満ち潮になってきました。
気がついた時には、その川は私の胸近くになっていました。
最初に兄が渡り、縄のようなものをさがしてきて、私に投げました。
私は杭に結んで、縄をつたってやっと辿りついたのでした。
真っ青になりブルブル震えていました。
思いで話になりましたが、ひもじくて辛かったという思いより、自然の中で精一杯生きてきたそのことが誇らしく思えてきます。
この本がきっかけで、祖母や祖父とも色々話あえるといいですね。
「その時代を生きた人たちの話をまだ聞いていないなら、今がその時です。」(著者あとがきより)
投稿者プロフィール
- ロングセラーの絵本、昔話絵本、赤ちゃん絵本などを取り揃えています。蔵書数はおよそ3500冊。長年、絵本専門店を営んできた店主が思い入れのある本をセレクトしています。
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