『自然をこんなふうに見てごらんー宮澤賢治のことば』

庭の片隅におおいぬのふぐりが咲いた。
みんな青い空をみてハミングしているようだ。
春が我が庭先に!

そんなところへ『自然をこんなふうに見てごらんー宮澤賢治のことば』(澤口たまみ/山と渓谷社)が届いた。

表紙をつくづくと見た。水の中だろうか。
葉の上の結露が美しい。
ページをめくると、おおいぬのふぐりとひめおどりこそうの写真。
こう書かれているではないか。
「―草むらで咲く花や、ふと見上げた空、街路樹で芽吹く木の葉。ほんの少し立ち止まり、身近な自然に目を向ける時間を 作ってみませんか。―」
私も草花たちからもらって『くさはらだより』という詩集を編ませていただいた。
スケールの大きさ、深さにおいて比ではないが、立っている位置が同じで嬉しくなった。
宮澤賢治の57のことばを通してやさしく自然へ誘ってくれる。
日ごろ見過ごしていたことや気がつかない発見がいっぱいあり、今一度賢治作品にも触れたくなる。
座右の本に加えたい。
最初から『秋田街道』には新鮮な驚きに打たれた。
「すぎなに露がいっぱいに置き 美しくひらめいている。新鮮な朝のすぎなに。」のことばとすぎなの瑞々しい、美しくきらめいている写真。
『賢治がここで露と書いているのは「水孔溢水」と言い、夜のあいだに植物から排出された水分です』と解説されていて、奥の深さを感じた。
ページを繰るごとにまさにセンス・オブ・ワンダーです。
『春と修羅』『ひかりの素足』『おきなぐさ』『チューリップの幻術』『ポラーノひろば』等などの作品群からことばと澤口たまみさんならではの解説が魅力的です。
好きな場面どこから読んでもいい気楽さも楽しいです。
まずは野や里山、街を歩いてみましょう。
そんな気持ちにさせてくれます。
ふと立ち止まると、いつもとは違った風景が見られるかもしれません。
賢治さんの真似っこしてきっと「心象スケッチ」をメモしたくなりますよ。

この本は以下のような構成になっています。
■内容プロローグ 宮澤賢治が教え子たちに伝えたこと
パート一 立ち止まってみる そばにある感動を見つける
パート二 感動するこころと向き合って 発見を言葉にする
パート三 新たな発見に出会う 視野を広げて
パート四 つまらないものはない 先入観を捨ててみる
パート五 暮らしとともにある自然 よりよく自然とつき合う
パート六 自然を見つめるこころ 幸せを願う
エピローグ 宮澤賢治が遺した、もうひとつの思い

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絵本専門店グリム
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