『チャンス』

お父さんの日に!

『チャンス』
(ユリ・シュルヴィッツ作/原田勝訳/小学館)

作者のユリ・シュルヴィッツは『よあけ』『ゆき』『あめのひ』そして『おとうさんのちず』などで有名だが、この『チャンス』に『おとうさんのちず』のエピソードも書かれている。
4歳の頃にワルシャワにあった自宅がドイツ軍に爆撃され、ユダヤ人であることからナチスの進攻からのがれるために両親と共にソ連へ逃げる。
そのソ連にても極寒の難民居留地など転々とさせられ、飢え、寒さ、病気、迫害と家族を襲いかかってくる。
ぼくは何度も病気になり死にかかった。
そんな苦難の中で心の支えとなったのは絵を描くことだった。

この本はそんな幼い日々の記憶を豊富な挿し絵とともに描いている。
「ぼくと家族が生きのびたのはまったくのチャンス(偶然)だった。」と。
どんな状況下であろうと前を向いて生き抜いてきたからこそと思う。
生々しい体験にもかかわらず絵からは、はしばしにユーモアさえ感じた。

『おとうさんのちず』のテュルキスタンへたどり着くまでも凄まじい。
いついかなる時も絵を描き続けた少年は、やがて大人になってアメリカにわたり私たちの知るところの絵本作家になります。
現在ロシアがウクライナに侵攻しているだけに、決して過去のものではない戦争を何とかとめることができないのだろうかと切に思う。
戦争でいちばん犠牲になるのは子どもたちだ。
日々の何でもない暮らしが一日も早くとり戻せますように。

他にもたくさんお父さん絵本あります

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絵本専門店グリム
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ロングセラーの絵本、昔話絵本、赤ちゃん絵本などを取り揃えています。蔵書数はおよそ3500冊。長年、絵本専門店を営んできた店主が思い入れのある本をセレクトしています。

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