『バンビ 森に生きる』(フェリクス・ザルテン作/酒寄進一訳/ハンス・ベルトレ画/福音館書店)

心打たれました!

『バンビ 森に生きる』(フェリクス・ザルテン作/酒寄進一訳/ハンス・ベルトレ画/福音館書店)

読み終えて本を置きしばしボーっとしていた。
今しがたバンビがそこにいたような錯覚を覚えるほど森に佇んでいた。
深いため息がでた。
「バンビ」というと、アニメーションなどで可愛らしいイメージがあるが、根底からひっくり返った。
森が広がり鳥の鳴き声や動物たちの話し声が聞こえてくるようだ。
挿し絵が彷彿とさせてくれる。
森で生まれたバンビは仲間や様々な生き物たちとかかわりながら、学んでいきます。
恋、母ジカや仲間の死、孤独、自然の厳しさ、喜びや悲しみを通して大人のノロジカへと成長していきます。
バンビを見守り導いてきたノロジカの古老の言葉「自分の耳で聞き、鼻でかぎ、目でみるのだ。自分で学べ」「しっかり生きるのだ」は、いつまでも心に響いています。
バンビが老成するまでの一生が目に見えるように書かれ、私たち人間の一生と重なり、真摯に語りかけてきます。

訳者の酒寄進一さんはオーストリアの自然の中で訳されたそうです。
それで臨場感があり、生きものたちの息づかいまでも感じられるのですね。
1923年の刊行、約100年前の物語ですけれど、今なお心打つ動物文学です。
沸々と熱いものがこみ上げてきました。

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絵本専門店グリム
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