あららのはたけ (村中李衣 作 石川えりこ 絵)
立秋とはいえ、お日さまの光をたっぷり浴びて畑の野菜、
雑草たちは真っ盛り
『あららのはたけ』(村中李衣・作 石川えりこ・絵/偕成社)
は、どうなっているでしょうか。
横浜から山口へ引っ越した小学4年生のえり。ある日、野菜づくりを
しているおじいちゃんにすすめられてちいちゃな畑をつくることに
なりました。
えりはもものけむしで顔が腫れたことやじいちゃんから教わった
しろつめくさなどの雑草、台風の前に巣作りに手抜きをするクモのことなど
逞しく生きているものたちのことを、親友のえりに手紙を書きます。
エミの方からもクラスの様子、何よりもやはり仲良しだったけんちゃんが
学校に来なくなり引きこもってしまつたことが綴られてきます。
エミはえりから送られてきた野菜を持ってけんちゃんの家へ行き、
とっかかりを見つけようとします・・・
初めての畑を通してのみずみずしい感性が心地よく、
分からないことは調べあったりする好奇心いっぱいの二人の少女が
素敵です。
当節あまり手紙でやりとりしなくなっていますが、いいものですね。
二人の手紙から緑の風が吹いています。風景が見えてきます。
私の子ども時代も延長線に見えてきました。
何だかトマトをもぎってかじったような日なたの味がしました。
ほっこりと温かい幸せな余韻。
石川えりこさんの挿絵が“あららのはたけ”へ誘ってくれます。
じいちゃんがさりげなく教えてくれる生き物たちのことは
含蓄の深いことばで学べることがいっぱい。
「雑草はふまれるとな、しばらくじいっと様子見をして、
ここはどうもだめじゃとおもうたら、それからじわあっと、根をのばして、
別の場所にはえかわるんじゃ」とかね「危機をくぐりぬけると、植物は
その種の中でもっとも生命力に強い性質に戻る『先祖返り』をするとか
優しい生き方の指南書にもなりそう。
願わくは同じ位の年齢の子にエミとえりの友だちになってほしいなぁ~。