『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』

☆松岡享子さんが最後に遺してくれた、たのしくユーモラスなおきみやげ☆   
表紙をめくると記されている。 
「暮す」ということが大事。
いそがしく、たのしくね。        

松岡享子

『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』
(松岡享子原案・文/降矢なな/福音館書店)

小さな家で仲良く暮らすえんどうまめばあさんとそらまめじいさん。
二人とも毎日くるくるとまめまめしく働いていました。
ところが困ったことに何かをやっていても他にやりたいことが見つかるとほったらかして新しいことを初めてしまいます。
ご飯を食べているときに、畑のえんどうまめのつるがのびていることを思い出すと「ぼうをたてて つるをまきつけなくちゃ」と畑へ。
草ぼうぼうの畑を見ると棒をたてるのを忘れて草とりをはじめる。
その草をうさぎに食べさせようと小屋に行くと今度は金あみが壊れているのを見ると・・・

「うん、あるある」と頷きながら読んでしまいます。
こんなときは「ああ!」と情けなくなったり落ち込んだりです。
でも、えんどうまめばさんとそらまめじいさんはそんなこと全く意に介せず楽しんでさえいるようなのです。
この穏やかな時間の流れ、あふれるようなユーモア。
「暮す」ことの意味を深く問いかけてきます。
夫がもう少し生きていてくれたら、こんな暮らしがしたかったとつくづく思います。
今思うと介護とはいえ、肩に力が入りキリキリしていました。
松岡享子さんが今年の1月に亡くなる前に病床で降矢ななさんと作り上げた渾身の一作。
にわとりやうさぎ、畑仕事の風景は降矢ななさんが暮らすスロヴァキアとのことで、ウクライナと隣接しているだけにどんなにか緊迫していることでしょうか。
絵がユーモアたっぷりで見返し、裏見返しなども思わず”見返し”てしまいます。
顔がほころんできます。
コロナ禍が続き息のつまるのような毎日、混沌とした今だからこそ読んでほしい一冊です。

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絵本専門店グリム
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ロングセラーの絵本、昔話絵本、赤ちゃん絵本などを取り揃えています。蔵書数はおよそ3500冊。長年、絵本専門店を営んできた店主が思い入れのある本をセレクトしています。

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